ブロック注射を続けても改善しない理由
「注射をした直後は楽。でも、これって治っているの?」

腰痛や坐骨神経痛などで、
「ブロック注射をしましょう」
と言われた経験がある方もいらっしゃると思います。
注射をすると痛みが楽になる。
だから、
「悪いところが治ったのかな?」
と思いますよね。
反対に、
何度か受けても痛みを繰り返していると、
「注射が効いていないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、どちらとも一概には言えません。
大切なのは、
ブロック注射には「得意なこと」と「それだけでは解決できないこと」がある
ということです。
1.そもそも「ブロック注射」とは?
ブロック注射とは、
痛みに関係している神経や、その周辺に薬剤を注射する治療の総称です。
代表的なものには、
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神経根ブロック
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硬膜外ブロック
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仙骨硬膜外ブロック
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椎間関節やその周辺を対象としたブロック
などがあります。
どこに注射するかは、
痛みの原因や症状によって異なります。
使用される薬剤には局所麻酔薬があり、神経から伝わる痛みの信号を一時的に遮断することで、痛みを和らげます。
また、方法によってはステロイドなどを使用し、神経周囲の炎症を抑えることを目的とする場合もあります。
つまり、
「ブロック注射=ただ痛いところに麻酔を打つ注射」
というわけではありません。
治療として使われるだけでなく、
「この神経が痛みの発生源なのか?」
を確認する診断の補助として使われることもあります。
例えば腰椎椎間板ヘルニアでは、どの神経根が症状に関係しているのか判断が難しい場合、選択的神経根ブロックが診断の参考になることがあります。
2.ブロック注射のメリット
強い痛みを比較的早く軽減できる可能性がある
ブロック注射の大きなメリットは、
①強い痛みを軽減できる可能性があることです。
例えば、
脚まで強い痛みが走る。
痛くて眠れない。
身体を動かすこともつらい。
こうした状態では、
まず痛みを軽減すること自体に大きな意味があります。
「薬や注射に頼りたくないから」
と、強い痛みをひたすら我慢する必要はありません。
痛みが軽減することで、
眠れる。
歩ける。
仕事や家事ができる。
リハビリを始められる。
といった次の行動につながることもあります。
②炎症を抑えられる場合がある
例えば、神経周囲に炎症が関係している坐骨神経痛などでは、ステロイドを用いた硬膜外注射によって炎症を抑えることを目的とする場合があります。
海外の研究をまとめたCochraneレビューでは、坐骨神経痛に対する硬膜外ステロイド注射は、プラセボと比較して短期的には脚の痛みや身体機能をわずかに改善する可能性が示されています。
ただし、その平均的な効果は小さく、すべての人に大きな改善が得られるわけではありません。
③痛みの原因を探るヒントになることもある
ブロック注射には、
治療だけでなく診断的な役割もあります。
例えば、
「画像では何か所か異常がある。でも、どこが実際に症状を出しているのか分からない」
という場合。
特定の神経根にブロックを行い、
症状が大きく変化するかを見ることで、どの神経が症状に関係しているのかを判断する材料になることがあります。
つまり、
ブロック注射は「痛みを止めるだけ」の治療ではありません。
使い方によっては、
次の治療方針を決めるための重要な情報にもなります。
3.ブロック注射のデメリットは?

まず知っておいてほしいのは、
効果の大きさや持続期間には個人差がある
ということです。
一度の注射で長期間症状が軽減する人もいれば、
「その日は楽だったけど、また戻ってきた」
という人もいます。
特に硬膜外ステロイド注射については、近年の研究でも、神経根症に対して短期的に痛みや機能を改善する可能性はある一方、効果は限定的であることが示されています。
また、注射ですから、
注射部位の痛み、出血、感染などのリスクがあります。
硬膜外への注射では、頭痛などが起こることもあります。
持病や服用している薬によって注意が必要な場合もあるため、
「注射だから気軽な治療」
というわけではありません。
4.ブロック注射の効果が期待しやすいのはどんな人?

ブロック注射は、
どんな腰痛にも同じように効く治療ではありません。
例えば、
腰から脚にかけて神経に沿った痛みがある。
椎間板ヘルニアなどによる神経根症が疑われる。
神経周囲の炎症が症状に関係していると考えられる。
強い痛みを一時的に軽減し、睡眠や日常生活、リハビリにつなげたい。
このように、
「どこをブロックするのか」と「現在の痛みの仕組み」が合っている場合
には、効果が期待できます。
日本の腰痛診療ガイドラインでも、神経根性疼痛に対する硬膜外ブロックや神経根ブロックには、短期的な効果があるとされています。
5.効果が出にくい可能性があるのは?
一方、
痛みの主な原因がブロックする神経とは別のところにある場合、
当然ながら十分な効果が得られないことがあります。
例えば、
筋肉や関節など別の組織が症状に関係している。
身体の使い方によって特定の場所へ繰り返し負担をかけている。
長期間動かなかったことで身体機能が低下している。
慢性痛で複数の要因が重なっている。
このような場合、
神経へのブロックだけですべての問題が解決するとは限りません。
これは、
ブロック注射が「弱い治療だから」ではありません。
治療している場所と、痛みを繰り返している要因が一致していない可能性がある
ということです。
6.「効いたのに、また痛くなった」には理由がある

ここが今回、一番お伝えしたいところです。
例えば、
ブロック注射をした。
痛みが10から3になった。
数日間とても楽だった。
でも、
仕事をしているうちにまた腰が痛くなった。
すると、
「ブロック注射では治らなかった」
と思うかもしれません。
しかし、
注射によって痛みが軽減したのであれば、
ブロック注射は「痛みを軽減する」という役割を果たしている
とも考えられます。
問題は、その先です。
もし、
筋力が低下している。
身体の使い方に偏りがある。
仕事で毎日大きな負担がかかっている。
活動量が大きく低下している。
といった別の要因が症状の再発に関係しているのであれば、
ブロック注射だけでそれらすべてが変わるわけではありません。
「痛みが消えた」と「身体の問題がすべて解決した」は同じではありません
ブロック注射では、局所麻酔薬によって痛みの伝達を一時的に遮断したり、ステロイドなどによって炎症を抑えたりします。
ですから、
「麻酔で痛みを麻痺させているだけだから意味がない」
というのも正しくありません。
痛みを軽減すること自体が治療として重要な場合があります。
ただし、
痛みが軽くなったことと、痛みを繰り返す背景まで変わったことは、必ずしも同じではありません。
ここを分けて考える必要があります。
例えば、
火災報知器が鳴っている家を想像してみてください。
大きな音が鳴り続けていたら、
まず音を止めることが必要な場合があります。
しかし、
その後に、
「なぜ報知器が鳴ったのか?」
も確認しますよね。
身体も同じです。
強い痛みをブロック注射で抑える。
そして必要に応じて、
「なぜ今回の痛みが起きたのか」
にも目を向けていく。
この二つは対立するものではありません。
繰り返しているなら「注射が効くか」だけでなく「なぜ繰り返すか」を考える
例えば、
毎年のようにギックリ腰を繰り返している。
そのたびにブロック注射を受ける。
痛みが落ち着く。
半年後、
またギックリ腰になる。
この場合、
「ブロック注射が良いか、悪いか」
だけを考えても十分ではありません。
なぜ何度も繰り返しているのか。
普段の身体の使い方はどうなのか。
身体機能は低下していないか。
仕事や家事でどんな負担がかかっているのか。
運動量はどうなのか。
今回の痛みに神経がどの程度関係しているのか。
こうしたことも一緒に確認する必要があります。
ブロック注射と「根本的に身体を見直すこと」は二者択一ではありません
当院では、
「ブロック注射を受けない方がいい」
とは考えていません。
強い痛みがある。
神経根性疼痛が疑われる。
痛くて眠れない。
痛みが強くてリハビリや日常生活ができない。
そのようなときには、
医療機関で適切な治療を受け、痛みをコントロールすることが重要です。
その一方で、
痛みが落ち着いてきたら、
「もう痛くないから終わり」ではなく、「なぜ痛みを繰り返したのか」を考えてみる。
そして、
変えられる要因が見つかれば、
そこにも取り組んでいく。
ブロック注射で「今ある強い痛み」を軽減する。
そして、必要に応じて「痛みを繰り返す背景」にも取り組む。
役割が違うだけで、
どちらか一方を否定する必要はありません。
まとめ
ブロック注射は、
単に「痛みをごまかすだけの注射」ではありません。
神経から伝わる痛みを遮断したり、
種類によっては炎症を抑えたり、
痛みの発生源を調べる手がかりとして使われたりします。
特に神経根性疼痛などでは、短期的な痛みや身体機能の改善が期待できる場合があります。
一方で、
すべての腰痛の原因を取り除く治療でもありません。
注射をすると楽になる。
でも、また繰り返す。
そんな場合には、
「ブロック注射が効く・効かない」だけでなく、「なぜこの痛みを繰り返しているのだろう?」
という視点も持ってみてください。
痛みを抑える治療と、
痛みを繰り返す要因を探して身体を整えていくこと。
それぞれの役割を理解して、
自分の状態に合った治療を選ぶことが大切です。


