天気が悪いと身体が痛くなるのはなぜ?

 

「雨が降る前は、なんだか身体が痛い……」

  • 「雨の日になると、膝や腰の関節がしくしく痛む……」

  • 「今日は頭痛がする。そういえば、台風が近づいているんだっけ……」

  • 「昔から梅雨の時期になると、なんとなく身体の調子が悪い」

こんな経験はありませんか?

「天気で身体が痛くなるなんて、気のせいかな?」

そう思う方もいるかもしれません。

 

しかし、実際に天候と身体の痛みの関係を調べた研究があります。

イギリスで慢性的な痛みを抱える2,658人を対象に、

15か月間の記録を分析した研究では、

湿度・気圧・風速と痛みの間に、小さいながらも統計的な関連が認められました。

 

ただし、すべての人が天気に影響されるわけではありません。

では、なぜ天気が悪くなると身体が痛くなる人がいるのでしょうか?

今回は、考えられる3つの理由と、日頃からできる対策をご紹介します。


① 気圧の変化と自律神経の関係

天気が悪くなるとき、変化しているのは雨や湿度だけではありません。

気圧も変化しています。

気圧とは、空気が私たちの身体にかけている圧力のことです。

特に台風や低気圧が近づくと、周囲の気圧が下がります。

この気圧の変化が、身体の痛みに関係している可能性があります。

 

1.気圧の変化が自律神経に影響する

私たちの身体には、気圧や気温などの環境変化に対応し、身体の状態を調整する仕組みがあります。

その一つが自律神経です。

自律神経には、活動時に働きやすい「交感神経」と、休息時に働きやすい「副交感神経」があります。

これらが状況に応じて働くことで、心拍数や血圧、体温調節、消化などが調整されています。

気圧の変化が自律神経系に影響し、痛みの感じ方を変える可能性が研究されています。

例えば、気圧の変化が片頭痛のきっかけになる方がいます。

また、もともと慢性的な痛みがある方では、天候の変化に伴って痛みが強くなる場合もあります。

ただし、気圧が下がると必ず交感神経が優位になり、痛みが強くなると証明されているわけではありません。

天候による身体の反応には個人差があります。

 

2.関節周辺の組織が膨らむ

もう一つ考えられているのが、気圧による身体への物理的な影響です。

私たちの身体は、普段から周囲の空気による圧力を受けています。

気圧が下がると、その圧力が小さくなります。

その結果、関節周辺の組織がわずかに膨張し、神経などを刺激することで痛みを感じやすくなるのではないか、という説があります。

例えば、もともと膝や腰に不調がある方では、こうした小さな変化が痛みに関係する可能性が考えられています。

ただし、これはまだ医学的に確立された仕組みではありません。

実際に天候と関節痛の関連を示す研究はありますが、気圧の低下によって関節が膨張し、それが直接痛みを引き起こすとまでは証明されていません。

つまり、天気による痛みには複数の仕組みが考えられる

気圧の変化によって、

  • 自律神経や痛みを感じる神経の働きが変化する可能性

  • 関節周辺の組織に物理的な影響が生じる可能性

などが考えられています。

ただし、どちらもすべての人に当てはまるわけではありません。

天気が痛みのきっかけになることはあっても、痛みの原因が必ず気圧にあるとは限らないのです。


② 身体を動かす機会が減る

もう一つ考えたいのが、

雨の日の過ごし方です。

例えば、晴れた日は、

朝から庭仕事をする。

近所まで散歩に出かける。

買い物に行く。

ところが雨の日は、

「今日は外に出るのをやめておこう」

と、一日中家でテレビを見て過ごす。

そんなことはありませんか?

もちろん、雨の日に休むことが悪いわけではありません。

ただ、普段より身体を動かす時間が減り、長時間同じ姿勢で過ごすことで、筋肉や関節のこわばりを感じることがあります。

特に、もともと腰や膝に不調がある方は、

動き始めに身体が硬く感じたり、痛みを感じたりすることがあります。

ここで大切なのは、

「雨の日だから動かない」ではなく、「雨の日でもできる範囲で動く」。

という考え方です。

外を30分散歩できなくても、

家の廊下を5分歩く。

椅子からゆっくり立ったり座ったりする。

家事の合間に少し身体を動かす。

それだけでも、座りっぱなしの時間を減らせます。

WHOも、少しでも身体活動を行うことは、何もしないより健康に良いとしています。


③ 雨の日と炎症の関係

「雨の日は、古傷が痛む」

という話を聞いたことはありませんか?

ここで関係してくる可能性があるのが、炎症や痛みの感じ方です。

そもそも炎症とは、身体が傷ついた組織などに反応して起こす防御反応の一つです。

炎症がある場所では、痛みを感じる神経が刺激に敏感になることがあります。

例えば、関節に炎症がある場合、動かしたときに痛みを感じやすくなることがあります。

では、雨が降ると炎症が強くなるのでしょうか?

実は、ここはまだはっきりしていません。

関節リウマチの患者さんを対象とした研究をまとめても、天候と痛みの間に全員共通の明確な関係は確認されていません。

一方で、天候によって症状が変化する人もいると考えられています。

つまり、

「雨が降ると炎症が増えるから痛い」とは、一概には言えないのです。

炎症そのものが増えていなくても、神経の敏感さや身体の活動量など、さまざまな要素が重なって痛みを強く感じている可能性があります。

だからこそ、天候だけを原因と決めつけず、もともとの身体の状態にも目を向けることが大切です。


④ 天気による不調を減らすには?

残念ながら、天気を自分の都合で変えることはできません。

しかし、日頃の生活習慣を整えることで、身体の健康を保ち、不調に備えることはできます。

当院では、次の3つを大切にしています。

 

1.自律神経の働きを支える生活習慣

まず大切なのは、毎日の生活リズムです。

特に意識したいのが、睡眠です。

毎日できるだけ同じ時間に起きる。

朝はカーテンを開けて光を浴びる。

夜更かしを減らす。

食事の時間も大きく乱さない。

こうした基本的な生活習慣を整えることは、睡眠や体調管理に役立ちます。

片頭痛のある方では、睡眠不足や生活リズムの変化が発作の誘因になる場合もあります。

「自律神経を整えれば天気痛が治る」ということではありませんが、日頃から体調を安定させる土台をつくることが大切です。

 

2.炎症に配慮した食生活

次に、毎日の食事です。

身体の炎症には、病気やケガだけでなく、肥満や生活習慣などが関係する場合もあります。

食生活では、

野菜や果物。

魚。

大豆製品。

全粒穀物。

などをバランスよく取り入れることを意識しましょう。

反対に、糖分の多い飲料や加工食品ばかりに偏らないことも大切です。

ただし、

特定の食べ物を食べれば、雨の日の痛みを防げると証明されているわけではありません。

「炎症を抑える特別な食品」を探すよりも、まずは偏りの少ない食生活を続けることが大切です。

3.雨の日でも途切れない運動習慣

そして、当院が特に大切にしているのが、

定期的な運動習慣です。

晴れの日だけ頑張って歩く。

雨の日はまったく動かない。

これでは、天候によって活動量が大きく変わってしまいます。

そこでおすすめしたいのが、

「天気に左右されない運動」を一つ持っておくことです。

例えば、

毎日5分、家の中を歩く。

椅子から立ち上がる運動をする。

自分に合ったセルフケアを行う。

特別な道具や広い場所がなくても構いません。

大切なのは、

「今日は雨だから何もしない」を減らすこと。

ただし、強い痛みや体調不良がある日は無理をせず、症状に応じて運動量を調整してください。


天気のせいだと思っていた痛み。実は別の原因があることも

ここで一つ、知っておいていただきたいことがあります。

「雨の日だけ膝が痛い」

「台風が近づくと腰が痛い」

という場合でも、

必ずしも天気だけが原因とは限りません。

もともと筋力が低下している。

関節に問題がある。

神経が過敏になっている。

普段の身体の使い方に負担がある。

こうした要素が重なっている可能性もあります。

天気が症状のきっかけになっていたとしても、天気以外に見直せる要素が残っているかもしれません。

また、急に強い頭痛が出た場合や、いつもと違う神経症状、発熱、関節の強い腫れなどがある場合は、天候の影響と決めつけず医療機関を受診してください。


まとめ

 

雨の日や台風の前に身体が痛くなる理由として、

  • 気圧の変化による自律神経や痛みの感じ方への影響

  • 関節周辺の組織に生じる物理的な変化の可能性

  • 雨の日の活動量の低下

  • もともとある炎症や身体の状態

など、複数の要素が考えられます。

ただし、天気と痛みの関係には個人差があり、すべての仕組みが解明されているわけではありません。

だからこそ、

「雨だから仕方ない」

と諦めるのではなく、

日頃の睡眠や生活リズムを整える。

バランスの良い食事を心がける。

天候に左右されず、無理のない範囲で身体を動かす。

こうしたことから始めてみましょう。

 

天気は変えられなくても、

日頃の身体との向き合い方は変えられます。

当院では、痛みが出る日の天気だけでなく、普段の身体の状態や生活習慣にも目を向けながら、一人ひとりに合った改善方法を考えることを大切にしています。


参考文献

  1. Dixon WG, et al. How the weather affects the pain of citizen scientists using a smartphone app. npj Digital Medicine. 2019.

  2. American Migraine Foundation. Seasonal Migraine Triggers. 2021.

  3. Smedslund G, Hagen KB. Does rain really cause pain? A systematic review of the associations between weather factors and severity of pain in people with rheumatoid arthritis. European Journal of Pain. 2011.

  4. World Health Organization. WHO Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour. 2020.