セルフケアでやってはいけないこと
正直にいいます。
あなたのセルフケア、本当にあなたに合っていますか?
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「テレビで『毎朝この運動をすると腰痛にいい』と聞いたから、ずっと続けている」
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「筋肉が足りないのがダメだと思って、ジムに通って運動している」
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「ラジオ体操は毎日欠かさずやっているから、運動は足りていると思う」
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「医者に『歩いた方がいい』と言われたから1時間歩いたら、逆に痛くなってしまった」
体操、ストレッチ、マッサージ、筋トレ、関節回し、ウォーキング……。
身体のために、毎日一生懸命セルフケアを続けている方はたくさんいらっしゃいます。
もちろん、身体を動かすこと自体はとても大切です。
実際、WHO(世界保健機関)は慢性腰痛に対して運動プログラムを治療の選択肢として推奨しています。
しかし、
「身体に良い運動」=「今のあなたに良い運動」
とは限りません。
NICE(英国国立医療技術評価機構)の腰痛・坐骨神経痛ガイドラインでも、運動を選択するときには、その人の具体的なニーズ・好み・能力を考慮することが推奨されています。
もし何か月もセルフケアを続けているのに腰痛を繰り返している。
あるいは、セルフケアをした後にかえって痛くなることがある。
そんな状態なら、一度セルフケアの内容や方法を見直すタイミングかもしれません。

間違ったセルフケアは、ときに「毒」
薬には、
「何を飲むか」だけではなく、
「誰が・どれくらい・どのタイミングで飲むか」
という考え方があります。
セルフケアも同じです。
ストレッチそのものが悪いわけでも、筋力トレーニングが悪いわけでも、ウォーキングが悪いわけでもありません。
大切なのは、
「今の自分の身体に、何が必要なのか」
です。
良かれと思って続けていることでも、
身体の状態や負荷の大きさ、やり方によっては、痛みを増悪させることがあります。

腰痛でも、皆、同じ体操ではダメ?
一言で「腰痛」といっても、痛みが起きている背景は人によって違います。
例えば、
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筋力が低下している
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一部の筋肉ばかり使っている
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股関節をうまく使えていない
- 過去の怪我が引き金になっている
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腰を反りすぎている
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前かがみの動作を繰り返している
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長時間同じ姿勢で仕事をしている
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神経が刺激されている
など、さまざまな可能性があります。
さらに、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変形性腰椎症など、診断名が付いている場合もあります。
実際、2021年に発表された腰痛の臨床診療ガイドラインでは、慢性腰痛に対して、
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体幹筋の筋力・持久力トレーニング
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特定の体幹筋を働かせる運動
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有酸素運動
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水中運動
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一般的な運動
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運動制御を目的とした運動
など、複数の運動方法が選択肢として示されています。
さらに、「運動制御に問題がある慢性腰痛」では、それに合わせた運動が推奨されています。
つまり、
「腰痛なら全員これをすればいい」という
一つの運動があるわけではありません。
身体の状態を確認し、その人に合った方法を選ぶことが大切です。

テレビやYouTubeの体操は「あなた専用」ではない
テレビ、YouTube、雑誌などでは、
「腰痛におすすめのストレッチ」
「膝痛にはこの体操」
「1日3分で肩こり対策」
といった情報をよく見かけます。
こうした体操が悪いわけではありません。
ただし、忘れてはいけないのは、
それらは不特定多数の人に向けて作られた情報だということです。
あなたの、
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年齢
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筋力
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関節の状態
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姿勢
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身体の使い方
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痛みが出る動作
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これまでのケガや病歴
を確認したうえで選ばれた運動ではありません。
WHOの慢性腰痛ガイドラインでも、
画一的な方法を全員に行うのではなく、
身体的・心理的・社会的な要素を考慮した個人中心の包括的なケアが重要とされています。
誰かにとって非常に良い体操が、あなたにも同じように合うとは限らないのです。

良いセルフケアも「やり方」違えば毒
これは非常に大切です。
セルフケアの内容そのものは適切でも、
負荷や方法がその人に合っていないことがあります。
例えば、質の良いお肉を買ってきたとします。
素材そのものは素晴らしくても、火加減を間違えて真っ黒に焦がしてしまえば、せっかくの食材を活かせません。
歯磨きだって同じですね。
毎日歯を磨くこと自体は良い習慣ですが、
歯ブラシの当て方や力加減が間違っていれば、十分に汚れを落とせなかったり、
歯や歯茎を傷つけたりすることがあります。
運動も同じです。
「この筋肉を鍛える体操」をしているつもりでも、身体の使い方によっては、鍛えたい筋肉ではなく、普段から使い過ぎている場所で動作を代償してしまうことがあります。
「何をするか」だけではなく、「どうするか」も大切なのです。
「筋肉ないからジム」も注意が必要
「筋力をつければ痛みが治る」
と思ってジムへ通い始める方もいます。
たしかに、筋力トレーニングを含む運動療法は、慢性腰痛に対して推奨されている治療法の一つです。
しかし、
負荷を強くすればするほど身体が良くなるわけではありません。
2021年の腰痛診療ガイドラインでも、
運動の種類だけでなく、運動量や強度、段階的な負荷設定が重要であることが指摘されています。
例えば、
本来お尻の筋肉を使うべき動作で、腰ばかり使ってしまう癖がある人が、
そのまま重い負荷で運動を繰り返せば、腰への負担が増える可能性があります。
長年身についた身体の使い方の癖がある場合には、
まず正しく動かせる状態をつくり、その後、身体の状態を確認しながら負荷を上げていく
という考え方も重要です。

「歩きましょう」と言われ、頑張りすぎていませんか?
ウォーキングも身体活動として大切です。
WHOも、慢性腰痛を抱える人に対する教育では、身体活動を維持することの重要性を伝えるべきだとしています。
しかし、
「歩くことが良い」
と
「たくさん歩けば歩くほど良い」
は同じではありません。
今までほとんど運動していなかった方が、突然1時間歩けば、それまでより大きな負荷が身体に加わります。
大切なのは、
今の身体に合わせて運動量を調整すること。
例えば、
「1時間歩かなければ意味がない」
ではなく、
まず10分程度から始めて身体の反応を確認し、問題がなければ徐々に時間や距離を増やしていく。
このように、身体の状態に応じて段階的に運動量を調整することも大切です。
ラジオ体操で「運動は十分」?
ラジオ体操も、全身を動かす一つの運動です。
しかし、
ラジオ体操だけで
すべての人に必要な筋力や運動量を補えるとは限りません。
逆に、肩や腰、膝などの状態によっては、一部の動作を調整した方がよい場合もあります。
「毎日やっているから大丈夫」ではなく、
自分の身体には何が不足しているのか
を知ることが重要です。
セルフケアのNG トップ5
当院では、特に次のようなセルフケアには注意していただきたいと考えています。
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痛みを我慢して無理に続ける
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「腰痛にはこれ」と原因や身体の状態を確認せず運動を選ぶ
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できない動きを回数や根性で補おうとする
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いきなり強い負荷・長時間から始める
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何か月続けても変化がないのに、同じことだけを続ける
セルフケアは、
「続けること」そのものが目的ではありません。
身体を良い方向へ変えていくことが目的です。
だからこそ、
「頑張っているのに良くならない」
という状態なら、
頑張りが足りないのではなく、方法が今の身体に合っているかを確認することが必要です。

当院は「あなたに必要なセルフケア」を考えます
当院では、
「腰が痛いから、この腰痛体操をしてください」
とは考えません。
まず、
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どの動きで痛むのか
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どこの筋肉が使えていないのか
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反対に、どこを使い過ぎているのか
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姿勢や身体の使い方にどんな癖があるのか
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普段どんな生活をしているのか
などを確認します。
そのうえで、
今のあなたの身体に必要なセルフケア
をご提案します。
身体が変われば、必要なセルフケアも変わります。
最初はできなかった運動ができるようになれば、次の段階へ進む。
そうやって身体の状態に合わせて内容を変えていくことが、根本改善や再発予防につながると当院では考えています。
まとめ
テレビの体操も、
ラジオ体操も、
ウォーキングも、
ストレッチも、
筋力トレーニングも、
それ自体が悪いものではありません。
実際、慢性腰痛に対する運動療法そのものは、WHOをはじめ複数の診療ガイドラインで推奨されています。
大切なのは、
「それが今のあなたに合っているか」
です。
一生懸命セルフケアを続けているのに、
腰痛を何度も繰り返している。
やった後に、むしろ痛くなることがある。
そんな方は、
「もっと頑張らなければ」
ではなく、
「今やっていることは、本当に自分の身体に合っているだろうか?」
と一度見直してみてください。
正しいセルフケアとは、
たくさんやることではありません。
自分の身体に必要なことを、適切な方法・適切な量で行うこと。
それが、身体を良い方向へ変えていくセルフケアだと当院は考えています。
参考文献・情報の出典
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World Health Organization(WHO)
WHO guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain in adults in primary and community care settings. 2023.
WHOが成人・高齢者の慢性腰痛に対して、運動プログラムや教育などを含む非手術的治療についてまとめた診療ガイドライン。 -
National Institute for Health and Care Excellence(NICE)
Low back pain and sciatica in over 16s: assessment and management(NG59).
腰痛・坐骨神経痛に対してセルフマネジメントや運動を推奨するとともに、運動の種類を選択する際には、その人の具体的なニーズ・好み・能力を考慮することを推奨。 -
George SZ, et al.
Interventions for the Management of Acute and Chronic Low Back Pain: Revision 2021.
Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2021;51(11):CPG1-CPG60.
慢性腰痛に対して、筋力・持久力運動、体幹筋運動、有酸素運動、水中運動、運動制御訓練など複数の運動療法を推奨。患者の状態に応じた運動選択についてもまとめられている。 -
Verville L, et al.
Systematic Review to Inform a World Health Organization (WHO) Clinical Practice Guideline: Benefits and Harms of Structured Exercise Programs for Chronic Primary Low Back Pain in Adults.
Journal of Occupational Rehabilitation. 2023;33(4):636–650.
WHO診療ガイドライン策定の根拠となったシステマティックレビューで、慢性腰痛に対する構造化された運動プログラムの効果と有害事象について検討している。

