痛みの原因は「痛い場所」とは限らない

 

痛いところを治療しているのに、なぜ良くならない?

  • 「膝がとても痛くてレントゲンを撮ったけど、特に問題はないと言われた」

  • 「足の痛みがずっと取れない。昔、腰のヘルニアを指摘されたことがあるから、きっとそれが原因だろうと思っているけど……」

  • 「いつも行くマッサージ屋さんで痛いところをほぐしてもらうのに、全然治らない」

こんな経験はありませんか?

「膝が痛いなら、膝が悪い」

「腰が痛いなら、腰が悪い」

普通はそう考えますよね。

もちろん、実際に痛い場所そのものに原因があることもたくさんあります。

しかし身体はそれほど単純ではありません。

痛みを感じている場所と、痛みを生み出している場所が違うことがあります。

だから、

「痛いところを揉んでもらっているのに、また痛くなる」

「レントゲンでは問題ないのに痛い」

ということが起こるのです。

では、なぜそんなことが起こるのでしょうか。


① 痛いところが「頑張りすぎている場所」かもしれない

例えば、

ある筋肉の力が弱くなったとします。

でも私たちは、

「今日はこの筋肉が弱っているから歩くのをやめよう」

とはなりません。

身体はなんとか歩こうとします。

すると、

本来働いてほしいところを補うために、別の筋肉や関節がいつも以上に働くことがあります。

つまり、

痛い場所が「悪い場所」ではなく、

「ほかをかばって頑張っている場所」になっていることがあるのです。

例えば会社でも、

一人休んだからといって仕事そのものがなくなるわけではありません。

残った人たちで仕事を分担します。

それが1日なら問題なくても、

何週間、何か月と続けば、

「もう限界です」

という人が出てくるかもしれません。

身体でも同じように、

一部分の機能低下を別の部分が補い続けることで、その場所への負担が増えることがあります。

この場合、

痛い場所だけを揉み続けても、

「なぜそこが頑張らなければならなくなったのか」

が変わらなければ、再び負担がかかる可能性があります。


② 神経の問題で、離れた場所が痛むことがある

もう一つ知っておきたいのが、

神経による痛みです。

例えば、

「膝が痛い」

と言われたら、膝の軟骨や半月板などを想像するかもしれません。

しかし、

腰の問題によって膝周辺に痛みを感じることもあります。

腰から出た神経は、太ももや膝、すね、足先などへつながっています。

特に腰椎のL3~L4付近の神経が影響を受けた場合には、太ももの前側から膝周辺に症状が現れることがあります。

実際、腰椎の病気による膝への関連痛では、L3~L4領域が重要で、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどが原因になるケースが報告されています。

つまり、

「膝が痛い=必ず膝が原因」とは限らない

ということです。

反対に、

「昔ヘルニアと言われたから、今の脚の痛みも全部ヘルニアだ」

と決めつけるのも注意が必要です。

昔見つかった画像上の変化と、現在の症状が必ず一致するとは限りません。

今の症状が、

腰からなのか。

膝からなのか。

股関節からなのか。

それとも複数の要因が関係しているのか。

現在の身体を改めて確認する必要があります。


③ 「関連痛」

神経が直接傷ついたり圧迫されたりしていなくても、

原因とは離れた場所に痛みを感じることがあります。

これを「関連痛」と呼びます。

分かりやすい例が、

股関節と膝です。

股関節に問題があるのに、

本人は「膝が痛い」と感じることがあります。

実際、膝の痛みを訴えて整形外科を受診した1,000人を調べた近年の研究では、137人、つまり13.7%が股関節由来の関連痛と診断されました。

筋肉から生じた痛みが、その筋肉の近くの関節に感じられることもあります。

つまり身体には、

「痛い場所」と「痛みの発生源」が一致しない仕組みそのものがある

ということです。

だからこそ、

膝が痛いから膝だけ。

肩が痛いから肩だけ。

という見方では、原因を十分に捉えられないことがあります。


④ 姿勢や身体の使い方によって、同じ場所に負担をかけ続けている

例えば、

仕事中ずっと前かがみになっている。

いつも同じ脚に体重をかけて立っている。

痛い脚をかばって反対側ばかり使っている。

こうした姿勢や身体の使い方によって、特定の筋肉や関節に負担が集中することがあります。

そこで、

硬くなった筋肉をマッサージしてもらう。

一時的に、

「あぁ、楽になった!」

となるかもしれません。

しかし、

翌日からまた同じ姿勢で8時間仕事をする。

すると、

同じところにまた負担がかかります。

これは、

床に落ちている水を毎日拭いているのに、水道の蛇口は開いたまま

という状態に似ています。

床を拭くことも必要です。

でも、

水が出続けている原因にも目を向けなければ、また床は濡れてしまいます。

身体も同じです。

筋肉をほぐすことが悪いわけではありません。

大切なのは、

「なぜそこが硬くなったのか」

まで考えることです。


⑤ 画像に「異常がある・ない」だけでは痛みを説明できないことがある

「膝が痛いのに、レントゲンでは異常なし」

そう言われると、

「じゃあ、この痛みは何なの?」

と不安になると思います。

しかし、

画像に大きな異常がない=痛みが存在しない

という意味ではありません。

レントゲンは骨の形や関節の隙間などを見ることには優れていますが、身体のすべてが分かる検査ではありません。

筋肉や腱、神経など、必要に応じて別の検査や診察で評価するものもあります。

さらに反対のケースもあります。

画像では変化が見つかった。

でも、

その変化が現在の痛みの主な原因とは限らない

ということです。

背骨のMRIでは、痛みのない人にも椎間板の変性や膨隆などが見つかることがあります。

だからこそ、

「画像で何か見つかった」

「画像では何もなかった」

だけではなく、

画像の結果と、今出ている症状や身体所見を合わせて考えることが重要です。


⑥ 痛みが長く続くことで、痛みに敏感になっていることがある

通常、

痛みは身体を守るための警報装置のような役割を持っています。

ケガをしたとき、

「そこを動かさないで!」

と知らせてくれる大切な仕組みです。

ところが、

痛みが長期間続くと、

痛みの感じ方そのものが変化する場合があります。

例えば、

以前なら気にならなかった程度の刺激でも痛く感じる。

少し動いただけなのに強く痛む。

痛む範囲が広がってくる。

といったことがあります。

これは単純に、

「そこがものすごく傷んでいる」

だけでは説明できないことがあります。

国際疼痛学会(IASP)も、痛みは単なる組織の損傷だけで決まるものではなく、生物学的・心理的・社会的な要因から影響を受ける個人的な体験だとしています。

つまり、

痛みの強さと、身体の傷み具合は必ずしも比例しません。

だからこそ慢性的な痛みでは、

「痛いところだけ」を探し続けるのではなく、

痛みがどのように続いてきたのかも確認する必要があります。


⑦ まったく別の病気から痛みが出ていることもある

頻度は高くありませんが、

筋肉や関節以外の問題によって身体の一部に痛みを感じることもあります。

内臓の病気などが、

離れた場所の痛みとして現れる「関連痛」もあります。

そのため、

「肩が痛いから肩こり」

「腰が痛いから筋肉の問題」

と最初から決めつけないことも大切です。

特に、

突然経験したことのない強い痛みが出た、

発熱を伴う、

胸の痛みや息苦しさがある、

原因不明の体重減少がある、

排尿・排便の異常がある、

急に力が入りにくくなった、

など、いつもの痛みとは違う症状がある場合には、まず医療機関での評価が必要です。


だから当院では「痛いところだけ」を見ません

もちろん、

痛いところを確認することは大切です。

しかし、

膝が痛いから膝だけ。

腰が痛いから腰だけ。

肩が痛いから肩だけ。

とは考えません。

例えば膝が痛ければ、

膝そのものだけでなく、

股関節や腰の状態。

筋力。

身体の使い方。

普段の仕事や家事。

いつ、どんな動作で痛むのか。

こうしたことを一つずつ確認していきます。

なぜなら、

痛いところは「結果」で、原因が別の場所に隠れていることがあるからです。


まとめ

 

痛い場所と、

痛みの原因となっている場所は、

必ずしも同じとは限りません。

 

痛い場所がほかをかばって頑張りすぎている。

腰の神経の問題が脚や膝に現れている。

股関節などから関連痛が起きている。

姿勢や身体の使い方によって負担を繰り返している。

画像では捉えにくい問題がある。

痛みが長く続き、痛みに敏感になっている。

そして時には、

筋肉や関節以外の病気が隠れていることもあります。

 

だから、

痛い場所を揉む。

湿布を貼る。

そこだけをストレッチする。

それで改善しないからといって、

「もう治らない」

と決める必要はありません。

 

見る場所を変えると、

今まで気づかなかった要因が見えてくることがあります。

「どこが痛いか」だけでなく、「なぜそこが痛くなっているのか」。

当院では、

そこまで身体を見ていくことを大切にしています。